2001年度 日本財団助成事業



C A P
(子どもへの暴力防止プログラム)

――子供たちの内なる力を信じて――


1.CAP(子どもへの虐待防止プログラム)とは?
2.CAPワークショップ取り組みとその流れ
3.実施日程・講師及び参加者数
4.大人の講演会参加者の感想
5.子どもワークショップ参加者の感想



1.CAP(子どもへの暴力防止プログラム)とは


 CAPとは、Child Assault Prevention つまり子どもへの暴力防止の略で、1978年にアメリカのオハイオ州で起こった小学校2年生の子どもへのレイプ事件をきっかけに、レイプクライシスセンターから誕生しました。現在、世界10カ国でも実施され、もっとも信頼のおける暴力防止プログラムの一つという評価を受けています。日本でも1995年にCAPプログラムを実践するスペシャリストの養成講座が開催されて以来、全国約50ヶ所で実施されるようになりました。
 子供達は、いじめ・誘拐・性的暴力などさまざまな暴力にさらされています。これに対して「〜してはいけない」といった禁止による防衛ではなく、子供達が本来持っている力を引き出すことによって、子ども自身が暴力に立ち向かうことができるよう援助するのがCAPの立場です。


→CAPのホームページはこちら


2.CAPワークショップの取り組みとその流れ


◎なぜ、CAPに取り組んだのか?
 可部の地で、豊かな舞台芸術の鑑賞と、さまざまな遊び体験を子どもたちに提供することで、子どもたちの豊かな感性を育てていこう、と「可部おやこ劇場」が発足して約15年間、私達は子どもを取り巻く環境について常に問題意識をもちつづけ、その環境が少しでも良くなる方法について学習を重ねてきました。
 その間、子どもたちを取り巻く社会の状況は、ますます悪化し、いじめや虐待、果ては通り魔などによる犯罪など、子どもたちが本来持っているはずの、安心して、自信を持って、自由に生きていく権利が脅かされようとしています。
 私たちは、そのことを大きな問題と考えるうちに、CAPの存在を知り、大人対象の講演会などを企画してきました。
 そして昨年初め、当初会員の子供たちを対象に、「子どもワークショップ」を開催することを検討していました。
 しかし、CAP本来の目的と、また、同じ時期により広く地域の子どもたちを視野に入れて活動を展開していくために、特定非営利活動法人格を取得していこうとしている私たちの活動の目的を考えたとき、会員の子どもたちに限定することは、真の目的に沿わないのではないか、と考えたのです。
 そこで、日本財団へ助成金を申請し、受理され、今回のように広くたくさんの地域での実施へと踏み切ったのです。


◎地域での取り組みの難しさ
 本来、CAP子どもワークショップは、学校のクラス単位で行うことを前提としてプログラムされているため、今回のように、地域の多くの不特定多数の子どもたちを対象として行う場合、参加人数が当初予定していたほどは集まらず、また大人対象の講演会についても、CAPに対する理解度が低いため、単に「いじめ」に遭っている子どもたちを対象にしているのだろう、と捉えられ、予定人数を確保できない状況でした。
 そのような中で、地域の各小学校・中学校へのチラシ配布や、公民館などへの広報活動、新聞などへの働きかけ、さまざまな方法での広報を試みました。その結果、地域の小学校の教職員からの問い合わせや、周辺地域からの参加などもあり、少しずつではありますが、地域の中での理解が深まっていきました。


◎第1回目の取り組みの波紋と第2回目の実施
 このような状況の中、子どもワークショップの応募人数が予定数に満たずクラス数を減らしたり、予定していたワークショップ・講座の会場費が、公民館など減免対象の会場が確保されたために、日本財団に申請していた当初の予算よりも少ない経費で第1回目の取り組みを終えることができました。
 また、1回目の取り組みの後、大人の講演会を受講された地域の小学校の教職員の働きかけにより、小学校での教員研修が実施されたり、他の小学校からもPTA研修として取り組みたい、という問い合わせなどがありました。
 1回目の取り組みを終え、まだまだCAPそのものに対する理解度の不足を痛感し、残りの予算を「大人対象の講演会」を多く実施することで、地域への理解を促していこうということになりました。
 また、1回目は、可部の中心地域での実施でしたが、2回目はより周辺地域への働きかけをしていこうという意図から、周辺の公民館などでの実施を企画しました。そのような動きの中で、2000年から全国的に開設されている「子どもセンター」の一つで2001年に始動した「あさきた子どもセンター」の方から、「共催事業として実施してはどうか」という申し出があり、周辺の3箇所の公民館での実施が実現しました。
 子どもワークショップに関しても、地域の2つの小学校が会場を提供してくださるという形で、夏に教員研修を実施された1校は、2学年の全クラス、もう1校は全校生徒対象に実施できることになり、また取り組みの説明をしていく中で後者の学校で理解を示してくださり、教員研修を取り組んでいただきました。


◎取り組みの成果および今後の可能性
 今回の取り組みを終えて、地域の中でのCAPに対する理解が少しずつ深まっているという手ごたえを感じました。
 しかし、それと同時に、このような働きかけを継続的に実施していくことの必要性も痛感しました。
 子供達は日々成長していきます。その成長とともに、保護者やその周囲の大人たちもまた成長していくのではないでしょうか?
 乳幼期の保護者の持っている問題意識と、幼児期の保護者の持っている問題意識、小学生・中学生・高校生・・・といと子供達が成長するにつれ、それぞれの保護者の問題意識は変わっていきます。
 CAPの提言している、「安心」「自信」「自由」の権利が侵害されることなく、子どもたちが豊かに成長していくためには、常にさまざまな年齢層の大人たちへ働きかけていくことが必要なのではないでしょうか。
 今回、私たちは地域に一つの問題提起をしました。
 これを契機に、より多くの大人たちが、子どもたちの本来の権利について深く考え合い、そのことを子どもたちに伝えていく方法について真剣に取り組んでいって欲しいと思います。
 また、私たちも大人の一人として、私たちの活動を通じて、さまざまな形でそのことを伝えていく義務があるのだと痛感しました。


3.実施日程・講師及び参加者数


<大人の講演会>
実施日時 実施場所 講師 参加者数
2001年4月14日(土)13:00〜 広島市可部公民館 桑田晴子 19名
5月19日(土)19:00〜 安佐北区民文化センター 桑田晴子 11名
6月2日(土)14;00〜 広島市可部公民館 岡本晴美 10名
6月16日(土)19:00〜 安佐北区民文化センター 桑田晴子 21名
2002年1月19日(土)10:30〜 広島市立久地小学校 田頭伸子 26名
2月4日(月)10:15〜 広島市三入公民館 田頭伸子 12名
2月13日(水)10:15〜 広島市可部公民館 田頭伸子 19名
2月14日(木)10:15〜 広島市亀山公民館 田頭伸子 23名
大人の講演会総参加者数 141名


<子どもワークショップ>
実施年月日 2001年
4.15(日)

5.26(土)

6.23(土)
2002年
1.24(木)

2.2(土)
開始時間 10:30 10:30 10:30 13:40 9:40
チーム数
参加者数 26名 33名 35名 38名 104名
子どもワークショップ総参加者数 236名


4.大人の講演会参加者の感想


* 具体的な場面で具体的方法を考えていくことは、大切なことだと思いました。考えていれば行動も可能になると思います。ロールプレイはわかりやすい方法だと思います。
* タイムリーなお話が聞けてよかったです。少し前にこどもがいじめにあい、自分なりに考えてフォローしたり、話を聞いたり、話し合ったりしたのですが・・・、今日のお話を聞いて「これだ!」と思いました。生活の中で実践していきたいとおもいます。
* 「話してくれてありがとう」この言葉を普段の生活の中で使っていきます。子どもが自分の身を守れるよう応援していきます。
* 知らないうちに自分の中にたくさんの枠があることに改めて気づかされました。子ども自身の対応の方法もですが、親の対処、受け止め方について深く考えさせられました。
* 子どもとの日常会話からエンパワーメントしていけたらとつくづく感じました。でも、今は逆になることが多いかな?反省しています。先生のお話には「子ども自身に力があることを気づかせる」など『目からウロコ』のような感動がありました。
* 人間が安心して生活できる社会でなくなってきたこと。子どももその矢面に立っていること。悲しいことですが現実ですよね。CAPのように子どもが自分で自分を守る意識をもつよう教育することがとても重要だと思いました。小学校でやるとよいですよね。ワークショップがあったら絶対行かせます。
* 今日はありがとうございました。大変わかりやすく話を聞くことができました。虐待や子育て、安心、自身、自由の権利があるということが心に残っています。また機会があれば参加してみたいです。
* 権利とか自由について再度感得させられました。子どものためだけでなく自分にとって、とても勉強になりました。ありがとうございました。
* 東京にいるころ娘が見知らぬ男性に不快なことをされたとき、知り合いのお母さんがCAPのことを勉強されていて、すぐ「100パーセント男性が悪いんだということを子どもにしっかり話して!」と忠告してくださり、心に傷を持たせないですみました。7,8年前、CAPの記事を新聞で読み、子どもに受けさせたいと思ってきましたが、やっと今日は自分が受けられてとてもよい勉強になりました。早い段階で子どもに受けさせたい。
* CAPについてはなんとなく理解していましたが、今回のお話でよくわかりました。今子育てをしている我が家の中にもよく起こりうる話であり、このような知識を身につけ、考えながら子どもと関わっていきたいと思いました。子どもも私も自分らしく生きていけるといいなと思っています。そのように取り組んで行きたいものです。


5.CAP子どもワークショップ参加者の感想


* 今日のワークショップでいいたいことが全部言えてなんだかすっきりしました。
* みんなが持ってる「安心・自信・自由」の3つの権利を知ることができた。知らない人との話し方とかも知ることができた。
* 基本動作を教えてもらって、これから何かあったら、何かできるかな?と思いました。
* 楽しかった。いやなときには大人の人に言う。
* けんりを守ることの大切さがわかった。これからは、はっきりいえるようになれるといいな!と思いました。
* すごくわかりやすくて自分のためになりました。指導者の方もとてもおもしろくて楽しかったです。もしこんなことが身のまわりに起こったら、今日習ったことをいかしてやろうと思いました。
* そんなおじさんが中にもいるんだなと思いました。
* いろんな勉強をしていろんなことがわかりました。安心・自信・自由、連れて行かれそうになったとき小指をひねる、足を踏む、大声を出すことを教えてくれて、とても自信がつきました。劇もとても楽しかったです。先生に相談するもの良い考えだなぁと思いました。